子どもが手術してまで本当に人工内耳が必要なのかどうか。難聴のお子さんを持つ両親がほぼ必ずと言っていいほど悩む選択の一つですね。
実は人工内耳の歴史はまだ浅いのです。ほんとうに目まぐるしい発展の途中にあります。
私の息子の時とは制度や認識も大きく変わっていますので、現在の治療との違いも認識しつつ参考にしていただければと思います。
補聴器と人工内耳の違い
補聴器と人工内耳について簡単に説明しておきます。
補聴器は耳にはめる『音を大きくする機械』です。マイクで音をキャッチし、鼓膜を震わせる力を大きくすることで聞こえを補助する機械です。
人工内耳は、マイクで拾った音を電気信号に変換し直接聴神経に伝える器械です。聴神経は頭蓋内にあるので、機械を付けるには手術をする必要があります。
どちらがお子さんに適しているかは、検査データや専門家の意見を聞き、いろいろと情報収集する中で納得いくものを選んでください。
遺伝子検査も判断材料の一つに
難聴の種類は細かく分けるといろんな遺伝子変異型に分類され、その型によって聴覚のどこの障害なのか詳しく知ることができます。全てを知っているわけではないので、息子の難聴についてお話します。
難聴の中でも最も多いとされる遺伝子変異型の『GJB2』。これが息子に出現した難聴の原因となる遺伝子変異型です。
簡単に言うと、蝸牛という場所にあるはずの液体がなく、電気信号を聴神経に伝えることができない障害です。(解釈が違っていたらごめんなさい)
要するに、どんなに補聴器で鼓膜を一生懸命震わせてもその先の構造上聞こえの獲得が難しいのです。
このように難聴の種類から原因を知ることで、今後の有効的な治療法の決定に大きい情報と考えられます。
この様に遺伝子変異型を調べるには遺伝子検査という特殊な検査が必要とされます。検査自体は血液検査ですが、先生からの詳しい説明や同意書のサインが必要です。
現在はこのGJB2の治療に対する研究も大きく進んでおり、新たな治療法の確立に期待が寄せられます^^
補助具に頼るのではなく、医療の進歩を待つべきではないか
答えはNO。
難聴に対する医学が進歩をしているとはいえ、子どもの脳は日々成長しています。
音はどこで聴いているか。実は脳なんです。
耳は音を拾う役割としてとても重要な働きを担っていますが、音や声として認識するのは脳なんです。
脳の中でも聴覚に関する情報処理をする場所は決まっています。これを『聴覚野』と言います。健聴の子どもたちは自然と入ってくる音や言葉で育ちます。しかし難聴児はこの聴覚野を育てなければなりません。聴覚野が育たないと、この聴覚野は別の情報処理をすることになります。
この聴覚野、後から書き換えることは難しいんです。聴覚野は3歳までにほぼ完成してしまいますので、この時期までに聴覚野を育てる働きかけをする必要があります。
それが補助具である補聴器や人工内耳となります。医療の進歩を願う気持ちもわかります。しかし脳の聴覚野が作られていない状態で、将来治療したところで想像していたように効果は期待できないのです。
重たい難聴の方が大人になってから人工内耳の手術して聞こえは取り戻せなかった、という話が難聴社会で語られていました。だから人工内耳は意味がない、人工内耳なんてつけて子どもがかわいそうと批判されることもありました。
その原因は脳の聴覚野が育っているかそうじゃないかです。どうかお子さんの『脳を育てる』ということを知っていてください。
最後に
少し厳しい発言をしてしまいましたでしょうか。一生懸命悩んでいる方のお力になれたらと思いましたが、気持ちを落ち込ませてしまってはないかと心配です。
そしてあくまでも持論ですので、ほんのすこーし参考にしていただけたらと思います。
息子の時代は片耳装用の時代で、両耳装用を推奨し始めた時でした。手術も1歳超えていないと受けられませんでしたが、現在は8か月で一度に両耳手術が主流だそうです。
時代や背景も変わり、ご両親の悩みポイントや方向性が多少違うのかな、とも考えましたが自身が当時悩んでいたことのアンサーを記事にしてみました。
補聴器も人工内耳もどちらを選択したとしても、あくまでも補助具でしかありません。何より大事なのが訓練や関わりです。
これから訓練だったり難聴を意識した関わり方も記事にしていくので、読んでいただけたらと思います。